なぜ「鍋」は叩かれているのでしょうか。

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毎日の家事でも使う鍋、「鍋もの」の季節にもなると出番はグ~ンと多くなりますよね。

皆さんはアルミ・銅などでできている「手打ちの鍋」をご存知でしょうか。
キレイな模様にも見える加工の跡ですが、なぜこのように叩かれているのでしょうか?
この模様のようなもの(?)は「槌目」と言われるもので、金槌によって叩き締められた証しです。

まずは鍋の製作工程を簡単に見てみましょう。- – –
アルミや銅など材料となる板を大まかなサイズに切り出します、さらに機械で叩いて全体を円筒状にします。
この端と端がピタリと合ったところを接合します、その接合部分はアルミ棒によってガス溶接されます。
電気溶接などの方法もあるのですが、接合した後に叩き締める作業をしても接合部が硬くて上手くいかないそうです。
木槌で叩き大体の形状や叩き締める位置決めなどをします。
そのあと一発勝負の金槌による「槌目」作りに移ります。

材料を回しながら「カン、カン、カン…」とリズム良く叩くところをみなさんもテレビの特集などで見た事ありませんか?
「さすがは職人さんの仕事!」と言いたくなるほど規則的に打ち込まれて並ぶキレイな模様に魅了されます。
この「鎚目」を付けることで鍋は叩き締められて強度が増すのです。

何もしていない材料板の状態ではアルミも銅も人の手でカンタンに曲げられてしまいます。
しかし、数回でも叩き締める作業が入ると同じ板でもそうカンタンには曲げられません。
職人さんは鍋底や胴部分の形状を調整しながら叩き締めていきます。

叩かれた表面の面積が大きくなる事で「熱伝導率」が向上して効率的に全体を加熱できるようになります。
叩き締めたことで板厚もわずかに薄くなるのでさらに熱の伝わり方が良くなるそうです。
また、鎚目ごとに対流が起きて料理も美味しく出来上がるそうです。

最近は機械で模様をプレスしたものが流通しているのですが、こういった加工は装飾として行っているモノです。
職人さんに「叩き締められた鍋」と同じような扱いはできません。
人の手で作られるものには「温かみがある」と言われますが、手打ちの鍋は「激アツ!!」かもしれませんね。