船舶用水素エンジンは、海運業界の脱炭素化や環境規制への対応を目的とした新しい動力技術の一つです。水素を燃料として使用することで、従来の化石燃料エンジンと比べてCO₂排出を大幅に削減できます。
🔧 船舶用水素エンジンの種類
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水素内燃機関(H2-ICE)
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水素をガソリンやディーゼルと同様に燃焼させて動力を得るエンジン。
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既存の内燃機関技術をベースに改良可能。
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一部NOx(窒素酸化物)の排出があるが、CO₂排出はゼロ。
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技術例:川崎重工やヤンマーが開発中。
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水素燃料電池(PEFC、SOFCなど)
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水素と酸素の化学反応で発電し、モーターで推進。
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高効率かつ排出は水のみ。
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船舶では高コストや出力制限が課題。
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実用例:ノルウェーのフェリー「MF Hydra」など。
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🚢 採用例・実証プロジェクト
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川崎重工業
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液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ(Suiso Frontier)」を開発。
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将来的に水素燃焼エンジンの搭載を検討。
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ヤンマー
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水素ディーゼルエンジンを搭載した小型実証船を開発。
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トヨタ・商船三井連合
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水素燃料電池搭載の港湾作業船の開発に着手。
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欧州(特にノルウェー)
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水素フェリーや水素内燃機関船の導入が進む。
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EUの「Horizon」プロジェクトなどが支援。
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✅ メリット
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CO₂ゼロ排出(特に燃料電池型)
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海洋環境への負荷軽減
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将来的な規制対応(IMOのGHG削減目標)
⚠️ 課題
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水素の貯蔵と供給:液化や高圧貯蔵の技術が必要。港湾インフラの整備が必要。
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エンジンの信頼性と耐久性:船舶特有の長時間運転や振動、塩害などへの対応。
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コスト:燃料、システム、保守コストが高い。
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安全性:水素の爆発リスクへの対策が必須。
🔮 今後の展望
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2020年代後半〜2030年代初頭にかけて商用化が進展
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燃料の「グリーン水素(再エネ由来)」化が鍵
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港湾と連携した水素供給網の整備が進む
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