元素検出器「GARIS」とは。

加速器(で通用する)画像
前回の記事で、加速器によって「元素113番」が検出、立証され
開発した日本の研究チームに、「命名権が与えられた。」
という話をしました。
その、「検出、立証」には加速器の最後尾に設置された
「(重)元素検出器 GARIS」を使用します。
今回は、この「重元素検出器GARIS」について、考えてみたいと思います。

:GARISの構造。
加速器を通過し飛んできた元素に、「磁力」を上下から加える事で
元素の進行方向を変える事ができます。この
「進行方向(ローレンツ力)」を利用し、進行方向が変わらずに
「真っ直ぐに飛び抜ける元素=元素113番」という磁力の調整ができれば、
113番元素の検出、立証が可能となる。という仕組みです。

:検出器内をヘリウム・ガスで満たす事で磁界を「113番用」に設定する。
元素113番にはヘリウムから「電子」を取り出したり、取り入れる性質があります。
この性質を利用し、「113番のみを検出する。」と言う仕組みです。
原子・ヘリウムの電子数は「2」です。元素113番が器内を通過する際、
他の元素はヘリウムから電子を取り込まない(取り出さない)ので、
通過する際、ローレンツ力によって弾かれますが、113番はヘリウムから電子を
取ったり取られたりする事で安定を図ります。(電荷の平均化)
これが検出器「GARIS」の構造です。

:どうすれば「立証」されるのか?
少なくとも同じ元素であるという確認が、10数個は必要になります。
その上で、「正しく元素崩壊(アルファ崩壊)されなければ、ならない」のです。
元素は番号が上がるほど崩壊速度も速くなります。(重元素)
(113番新元素の場合、崩壊速度は誕生からわずか1/1000秒です。)
元素崩壊とは簡単に言うと、2つに融合して誕生した元素が、
2つに分裂(し続ける)する事をいいます。この分裂が、「正しく行われる。」
これが、もう一つの条件になります。
(111レントゲニウム・109マイトネリウム・~103ローレンシウム・101メンデレビウム)
ここまで2つに崩壊(自壊核分裂)の確認が取れて、初めて「立証」となります。

:最後に。
現在、119~120番の新元素を各国が競って作成中との事ですが、
現状で元素は人工的に作れる範囲内で「173番くらいまでは存在するだろう。」
と言われています。個人的に興味深いと思ったのは、
ミクロ量子力学によれば、通常は重元素になればなるほど、崩壊速度は速くなるのですが
「ある特別な数字」に限っては、「崩壊せずに安定する元素もあり得る」
という仮説です。
もしこの仮説が立証されれば、また一つ、宇宙(自然)の謎の根源に迫る事になるでしょうし、
そう思うと夜も眠れなくなるので、そこは考えずに寝たいと思います・・・。