「形態安定繊維」の性能と仕組み

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特に男性はこの段階になって「シワが!!」と気付くものです。
季節が変わったりすれば必要なのが「衣替え」です。
大きく分ければ、半そでメインの「夏もの」と、機能性重視の「冬もの」がそれぞれ必要になってきます。

しかし、衣装ケースやタンスやクローゼットの奥から引っ張り出すと「型崩れ」「シワ」などすぐには着れないですよね。(私の収納のやり方が悪いだけかもしれませんが…)

*** どんなものでも「シワ」「折り跡」などは付きますけど…
紙でも布でも折ってしまっておけば「シワ」などがついて当然ですよね。
ハンガーに吊るして収納しておいても「型崩れ」などもおきたりします。

どんなものでも構成している分子レベルで折り曲げたりした際に起きる「ねじれ」「位置のズレ」「分子構成の変化」でこういった症状は発生します。

布の場合アイロンなどを使用することで元通りにできたりもします。
熱・蒸気(水分)による分子の結合のし直しと繊維自体の成形によって、付いてしまったシワなどの「クセ」を取る(元の状態に戻す)ことができます。
(紙の場合:アイロンがけしたら全体が縮んでしまった経験があるので蒸気を当てて手で軽く引っ張るなどの対処をオススメします)

鉄やプラスチックなどの場合は折れてしまうと元に戻すことは不可能と言っても過言ではありませんよね。(専門家の方は除く)

でも今は、「形状記憶合金」「形態安定繊維」などといった便利なものが使用されています。

*** 形態安定繊維の主な仕組み…
液体アンモニアの性質を利用した「液体アンモニア加工」や、繊維内にホルマリン混合ガスを吹き付けて安定させる「VP加工」
樹脂とセルロースを熱処理によって安定させた「樹脂加工」、アンモニア加工と樹脂加工をした生地を縫製して高温プレスをかけた「SSP加工」などがあります。

これらの処理・加工法によって、洗濯したものに「アイロンがけ」をしなくてもある程度のシワが取れる、また、シワが発生しにくいようになっています。
こういった処理により、繊維本来の「伸縮性」「柔軟性」という性能が弱まることもあります。

便利な「形態安定加工」は”アイロンをかけずにシワのない状態をある程度キープ”できますが、こういった加工により化繊特有の「スルスル感」はときに「ゴワゴワ感」と感じてしまうこともありますし、天然素材である「綿」も”風合い”や”肌触り”などが若干おちることがあります。

*** 繊維本来の仕組み…
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繊維の一本一本の形状も従来の平べったい繊維ではなく、丸い繊維を使用することで「ねじれ」を起こしにくくなります。
天然の素材ならばその個々の形状も均一ではありませんのでしわも発生しやすくなります。
化学繊維は太さや形状のバランスもとりやすいため「ねじれ」の発生も少なくなります。
繊維も分子レベルでいえば「結合」によって構成されています、分子と分子は架橋というもので繋がりを持っています。
天然の繊維は水分や熱の吸収や放散に優れている分、分子レベルでの構造の変化は大きく元に戻る力もだんだんと弱まってしまいます。
化繊に関しては「架橋」の部分を強くしたり調節することで「しなやか」になったり「変化に強い」ものになったりもします。

現在ではさまざまな素材で「不織布」という製造法が多く取り入れられています
“織物”といわれる、繊維を「縦糸」「横糸」で織り込んだものは、精緻でしっかりしている製法なだけに形状の変化による跡が残りやすい構造ではあります。
使用している素材では「綿や麻(天然素材)」でできた織物は「重み、折り曲げ、温度、湿度など」によるしわが残りやすくもなります。

「形態安定加工」はお手入れの手間を少しでも軽くできることが最大のメリットでもありますが、だからと言って”ハンガーに吊るして放置”なんてことはいけません。
汚れは繊維の中に浸透してしまえばこれはこれで落とすのが大変になりますからね。