「イオンジェットエンジン」の仕組み

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2010年6月に帰還した「小惑星探査機 “はやぶさ”」の話題には皆さんも感動しましたよね。
でも、酸素のある地球上では燃料に点火して燃焼させることで推進力を確保することは可能です。
しかし宇宙空間=真空です、たとえ燃料はあっても燃焼に必要な酸素はどうやって調達するのでしょうか。

*** そんなときには「イオンジェットエンジン!!」…
イオンジェットエンジンの仕組み(簡素版)
燃料(キセノン系)を電気の力でプラズマ化させることで電子イオンを高速で移動(噴射)して推進力にします。
陽(+)イオン発生源により燃料をイオン化させますがその際に陽(+)イオンは負(-)極側に移動します。
負(-)極は網目状(グリッド)になっているので陽(+)イオンのほとんどがこの網目を通り抜けます。
機体外に放出された陽(+)イオンは負(-)イオン発生器によって中和されるので逆流・放散することはありません。

イオンジェットエンジンの出力自体はロケットなどの推進力よりも優れているのですが、真空下での使用を目的とした構造ですので地球上でのエンジン出力はできません。
また網目状の負極への長期噴射によって侵食されるおそれがあるのも難点の一つだそうです。
ロケットなどの「燃料の燃焼による推進力」と比べれば、「イオン」の移動による力では一気に加速できるような力は出せず、ジワジワと進むことを余儀なくされることとなります。

・・・イオンジェットエンジンのメリット・・・
燃料効率が良い(燃費がとても良い)ので燃料タンクの容量も大きくなりすぎず運用できる
装置全体がコンパクトにできるので軽量化され、長期の連続運転も可能となります
イオン発生源から噴射までの構造がそれほど複雑ではないためメンテナンスの頻度も格段に減らせる
(「はやぶさ」にはイオンエンジンは4基搭載されていてうち3基をメインで、残り1基を予備としています)

・・・出力と運用のバランス・・・
もし地球上で使用できたとしても「強めの風」が吹いただけで影響を受けてしまうほどの出力しか出せないのですから、「はやぶさ」は使用可能なエンジンを上手に使ってゆっくりと、でも確実に進んできたのですね。
(一円硬貨を持ち上げる程度の力しか出せないそうです)

使用できる「イオン発生源」「イオン中和装置」の組み合わせを制御することで、使用不能となったエンジンの代替や負荷をかけすぎない運転ができました、そのおかげで無事帰還できたのです。

燃料として「キセノン」(アルゴンなど)を使用しますがキセノンはイオン化しやすい性質があり、発生させる装置も大掛かりにならずに済みます。
また “希ガス” ですのでやたらと反応はせず、長期間の貯蔵にも耐えられる性能も持ちます
(希ガスは他の元素と化合されにくく比較的安定した状態にあります)

いくら効率のよいエンジンでもただそれだけで帰還できたのではなく、それをうまく「運用」した技術者の皆さんの機転や決断によるところが大きいのでは?

そういえば、街中でもせっかく燃費の良いクルマなのにカリカリと焦ってムダな運転している人が多いですよね。
ココロの余裕が無いのが原因でしょう、もうちょっと「大きな器」に交換してもらいたいですね。